学校法人山口学園 広域通信制課程[単位制]総合学科 ECC学園高等学校

Interview

Students Interview

在校生・卒業生インタビュー

辻先生(京都学習センター長 地歴・公民担当)

少しずつ知って、少しずつ見えてくる。
目の前の生徒の心に映る景色。

祇園祭で見つけた「その子だけの視点」。
知ることから、生徒の良さを伸ばしていきたい。

校舎の5階の窓からは、毎年、祇園祭の鉾が見えます。去年も机を少しずらして、生徒たちと一緒に眺めていました。
鉾の飾りをじっと見つめながら、生徒がぽつりぽつりと話しはじめます。日常のこと、興味のあること。
「こんなこと考えてるんだ」 「こんな視点で見ているんだ」
普段の授業だけでは分からなかった一面を知れて、僕にとっても新鮮な時間でした。
生徒を見ていると、こういう小さな発見がたくさんあります。
京都学習センターは少人数だからこそ、一人ひとりと向き合う時間を大切にできます。
僕が生徒と接する時に大切にしているのは、相手を知り、いいところを見よう、見つけようとすること。授業でも、できる限り対話を大切にしています。「それに対してどう思う?」「どう感じる?」と、「答えのない授業」に取り組んでいます。同じものを見ていても、感じ方は一人ひとり違うからです。
その違いに触れるたび、「この子にはこんな考え方があるんだ」と気づかされます。生徒のダメなところより、いいところを見つけていく。そんな関わり方をするようになったのは、自分が高校生だった頃の経験も、少なからず重なっているのかもしれません。

「お前は心優しいから、教師になれ」
恩師が見つけてくれた自分の良さが、教員を目指すきっかけに。

高校生の頃の僕は、どちらかというと物静かで、あまり人と接しない生徒でした。当時は通信制高校がなく、通っていたのは定時制高校。夜から学校へ行き、昼夜が逆転するような生活をしていた時期もあります。
そんな僕を、当時の担任だった先生が、柔道部へ連れて行ってくれました。そこから少しずつ、生活が変わっていったんです。卒業する時、その先生にかけられたのが、こんな言葉でした。
「お前は心優しいから、教師になれ。」
教師という仕事を、初めて意識した瞬間です。その後、実際にその道を進むことを決めたのは、もう一つの出来事でした。友人を亡くしたこと。その友人は中学生の頃に不登校になり、20歳になる前に亡くなりました。友人のことを考えるうちに、学生時代というものの大切さを、あらためて意識するようになりました。
ECC学園高校との縁ができたのは、弟と妹がここの卒業生だったからです。実際に働きはじめて印象的だったのは、教員が生徒の生活そのものに深く関わっていくことでした。
一般的な高校では、授業が中心になることも多いと思います。でもここでは、勉強だけではなく、普段の生活やこれから社会でどう生きていくのかまで見ていく。いわば、人格形成の部分まで関わっていくような感覚です。難しいと感じる場面はありますが、そこまで関われることは、この仕事の大きなやりがいでもあります。

名前を聞くだけで、よみがえる三年間。
僕にとっても特別な卒業式。

京都学習センターでは、生徒が登校すると必ず職員室の前を通るので、「おはよう」と声をかけた時の返事や表情が、自然と目に入ります。「何かあったんかな」「元気そうだな」。そんな小さな変化に気づける距離です。校舎は広すぎず狭すぎず、生徒同士も自然とお互いが視野に入るので、少しずつ話すようになり、友達を作っていく姿が見られます。
そうして一人ひとりの様子を見ていると、生徒によって得意なことも苦手なことも違うと改めて感じます。
僕は、苦手なことって、無理に全部直さなくてもいいと思うんです。僕自身も、苦手なことはたくさんあります。どうすれば対策できるかを考えてもいいし、時にはそこから逃げてもいい。その代わり、自分の好きなことや得意なことを生かして、「これなら人の役に立てる」と思えるものを一緒に見つけていってほしいです。生徒との関わりは、思うようにいかないこともあります。それでも一人ひとりを知ろうと向き合ってきたからこそ、卒業式は僕にとっても、特別です。一人ずつ名前が呼ばれるたび、その生徒との思い出がよみがえってきます。本人にとっては、「とりあえず卒業できた」という日かもしれない。はたまた、新しい進路へ進むための通過点かもしれません。
でも僕は、一人ひとりの返事を聞きながら、「この子たちは、この瞬間のために三年間頑張ってきたんだな」と感慨深くなります。
式のあと「ありがとうございました」と言われると、その一言だけで、「この日のために仕事をしてるんかな」と思うくらい、積み重ねてきたものが全部報われるような、言葉にできない気持ちになるんです。
卒業後は、好きなことや得意なことを生かした道に進みながら、いろいろな人と関わって社会を見てほしい。卒業する生徒には、最後にそう伝えています。

一言メッセージ

今、学校のことやこれからのことで、いろいろ悩んでいる人もいると思います。でも、少しだけ勇気を持って、京都学習センターに来てみてください。ここで過ごす時間が、自分自身を変えていくきっかけになると思います。


 

―取材の余白―

「生徒からのたった一回の『ありがとう』で、それまでのすべてが報われる気がする」
辻先生が語ったこの言葉が、今も心に残っています。
教員という仕事は、生徒の数だけ物語があり、同じ一日も、同じ一年もない。一期一会の日々の中、かけた言葉が届かない日も、願うような変化が見えない日もある。それでも目の前の生徒を信じ、向き合い続ける。
その先に待つ卒業式。堂々と壇上に上がる生徒と、それを見守るご家族の笑顔。その一瞬が、長い日々をかけがえのない時間へと変えるのかもしれません。
今回の取材は、辻先生の人生を、ともに辿るような時間でもありました。
喜びも、悲しみも、心が引き裂かれるような経験も。その一つひとつが今の辻先生を形づくり、生徒に向けるまなざしの温かさにつながっているように感じます。
「お前は心優しいから、教師になれ。」
かつてそう声をかけた恩師は、もしかすると、今こうして誰かの人生に寄り添う辻先生の姿まで、見えていたのかもしれません。

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